お客様: 国立大学病院 放射線診断科様
ご依頼内容
- cine MRI(連続撮像MRI)から、臓器の動きを定量的に評価したい、というご相談。
- 先行研究の商用ソフトはソースコードが提供されず研究に使えないため、論文の手法を、自分たちの研究で使える形にしたい。
- 研究用にMATLABは購入済みだが、周囲に使える人がいないため、開発そのものを任せたい。
- 解析結果を、研究室で使い慣れたDICOMビューアに、そのまま読み込める形で受け取りたい。
- 最終的には、MATLABを持たないPCでも動く形で、配布したい。
課題
- 画像の見た目の変化を、色分けマップと物理量(mm/sec)の両方で、定量的に扱えるようにすること。
- スライスの構造と撮影時刻がDICOMタグに揃っていないため、撮像列の構造を復元すること。
- MRIの機種によってタグの持ち方が異なるため、その差を吸収すること。
- 解析の出力形式と配布形態を、臨床研究のワークフローに収まる形にすること。
ソリューション
- まず小規模な実現性検討から段階的に始め、動きが定量的に見えることを実データで確認してから、本開発に進んだ。
- 先行論文の手法(Horn-Schunckオプティカルフロー)を読み込み、画素ごとの動き量を求めて分布として可視化する解析ソフトを、一から実装した。
- DICOMの画素間隔と撮影間隔から、動き量を単位時間あたりの移動量(mm/sec)へ換算し、物理量として比較できるようにした。
- 原論文の位置合わせ処理は、本画像では形状変化が小さく効果が限られると判断して省き、代わりに正規化・コントラスト調整・輝度勾配の前処理を加えて、切り替えられるようにした。
- スライス位置と撮影時刻のタグから、スライス構造と総撮影時間を復元し、時刻のタグを持たない機種では別のタグや手入力で補う経路を用意した。
- 読込から、スライスごとのROI設定、複数スライスの一括解析、動画を含む結果の書き出しまでを、順に進める操作画面としてまとめた。
- 解析結果を、お客様が使うDICOMビューアで別シリーズとして表示できる形式で書き出し、二次解析ツールに合わせた画素サイズの整合にも対応した。
- MATLABを持たない環境でも動くよう、Windows/Macの実行型としてコンパイルし、必要な追加製品を画像処理向けの1製品のみとする構成にした。
- 年次でいただく要望書に対して改訂を重ね、ROI設定の操作性、単位系の物理量化、二次解析ツールとの連携を、段階的に拡張した。







結果
- 研究の進展に合わせて改訂を重ね、本体開発の約3年で12回のリリースを行い、その後の論文化・追加機能まで、計約6年にわたり対応した。
- 本ソフトを基盤ツールとした研究が、欧州放射線学会(ECR 2019)で発表され、査読付き国際誌に採録された(2022年)。
- 解析から結果の閲覧までが研究室の環境で完結するようになり、研究者ご自身で解析を回せる状態になった。
- 弊社も、MATLAB Expo Japan 2019のポスター発表で本件を発表した。
ひとこと
- 医用画像の解析は、手法そのものより、実データが持つ癖への対応に手間がかかります。スライスの構造や撮影時刻がタグに揃っていない、機種によってタグの持ち方が違う、といったことは実際によくあり、ここを詰めないと数値が揃いません。
- 論文の手法を実装するには、画像処理の知識と、医用画像の形式に関する知識の両方が必要になるため、専門的知識を持っている人が開発するのが良いと思います。
- GUIを付けた実行型のアプリケーションとして納めているので、プログラムに不慣れな方でも、普段お使いのビューアの延長で結果を確認できます。
- 「論文に書かれている手法を、自分の研究データで試したい」は、研究現場からよくいただくご相談です。手法の実装から、解析ツールとの連携、配布できる形にするところまでを、一括してお引き受けします。
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