お客様: 大手電機メーカー様

ご依頼内容

  • 空港の監視システムで、カメラ画像から鳥を検出するAIの、精度を上げたい。
  • 検出したあとに人が確認へ行かない運用なので、誤検知を減らすことを最優先にしたい。
  • 比較した方式の性能と、選定の理由が分かる報告書として、受け取りたい。

課題

  • 検出後に人が確認へ行かない運用に合わせて、誤検知の低減を最優先にすること。
  • 検出率を上げる調整と、誤検知を減らす調整は互いに逆へ働くため、その兼ね合いを決めること。
  • 約1万枚の実画像から正解データを作り、方式間の比較条件を揃えること。

ソリューション

  • お客様の運用を確認し、誤検知の低減を第1優先、見逃しの低減を第2優先とする評価方針を、最初に定めた。
  • 事前学習済みの検出器、鳥1クラスのファインチューニング、5クラス学習を、順に比較した。
  • 鳥検出の後段に、識別ネットワークを置く2段階方式を実装した。
  • ファインチューニングには、反転、拡大縮小、色変化のデータ拡張を適用した。
  • 誤検知が夜間の画像に集中していることを突き止め、しきい値の引き上げと、夜間を判定から外す方式を追加した。
  • Confusion Matrixから検出率と誤検知率を算出し、6方式を同一の指標で一覧化した。
舗装面にいる鳥を検出枠とスコアで示したサンプル画像
鳥を検出したときの表示イメージ。検出枠と、鳥である確からしさのスコアを重畳する。この画像は説明のために生成したサンプル画像で、実際の撮影画像ではありません。
YOLO v4のネットワーク構成図
物体検出に用いたYOLO v4のネットワーク構成。特徴抽出のbackbone、特徴を統合するneck、検出を出力するheadの3段からなる。出典: The MathWorks, Inc.「Getting Started with YOLO v4」(© 1994-2026 The MathWorks, Inc.)
鳥検出6方式の検出率と誤検知率の比較表
同一の評価データ・同一の指標で比較した6方式の一覧。一般には検出率の高さが優先されるが、本件は検出したあとに人が確認へ行かない運用のため、お客様の要望により「誤検知の低減が第1優先、見逃しの低減が第2優先」となる。この優先順位に合わせて、しきい値の引き上げと夜間の除外を加え、誤検知率を28.8%から0.7%まで下げた。検出率が最も高い(2)は、あえて推奨していない。
ファインチューニング後の検出器の混同行列
鳥1クラスでファインチューニングした検出器の混同行列。鳥の検出率は96.6%まで上がるが、鳥でないものを鳥と判定する誤検知率が28.8%に増える。
2段階検出方式の混同行列
検出の後段に識別ネットワークを置いた2段階方式の混同行列。誤検知率は0.8%まで下がるが、検出率は36.8%に落ちる。
推奨方式の混同行列
しきい値を上げ、誤検知が集中していた夜間の画像を判定対象から外した場合の混同行列。誤検知率0.7%、検出率74.7%となり、この点を運用の推奨点として提示した。

結果

  • ファインチューニングにより、検出率は63.8%から96.6%へ向上したが、誤検知率は1.9%から28.8%へ増加した。
  • しきい値の引き上げと、夜間を判定から外す調整により、誤検知率は28.8%から0.7%へ、検出率は96.6%から74.7%へ変化した。
  • 一般には検出率の高さが優先されるが、本件の優先順位に従い、検出率が最も高い方式はあえて推さず、誤検知率0.7%の方式を運用の推奨点として提示した。
  • 6方式の性能比較表と、継続評価が必要な条件を報告書にまとめ、方式選定の判断材料とした。
  • 精度指標の優先順位を運用条件から明文化したため、選定の理由と、以後の評価基準を、お客様側で共有できる状態になった。

ひとこと

  • 検出AIは、検出率が高いほど良い、と思われがちです。しかし、どちらの誤りが困るかは、検出の前後にどんな作業が続くかで変わります。今回の場合、検出率の向上よりも、誤検知率の低減のほうが重要なので、その方向での調整が必要となります。
  • 弊社は、その優先順位をお客様と決めたうえで、学習のさせ方、しきい値、後段での再判定、判定から外す条件といった調整を組み合わせて、減らしたい側の誤りを狙って減らします。正解データの整備から、方式の比較、選定理由の説明までを、一括してお引き受けします。

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